私たちは古くから、自然の樹液である漆を用いて器を直してきました。 そして金や銀などでお化粧をし、 傷跡を景色と見立てて、ものを大切にしていました。 この技術を通称として『金継ぎ(kintsugi)』と呼び、 受け継いで来た興味深い文化を持っています。
現在、直し方には様々な手法が登場していますが、 私は昔ながらのやり方で、温度や湿度を待ちながら 時間をかけて直すことにしています。 「待つ」ことに大切なものが潜んでいると感じるからです。
ひとつひとつの器が違うことに加え できた傷もひとつひとつ違います。 手に取り、よく見て、それぞれの個性を見つけ、 従来の伝統を踏まえつつも、 その景色に、今の時代の息をも吹き込めたらと思います。 新たな顔となった器で、 直して使い続けることできる気持ち良さを、 発見して欲しいものです。
もし、大切にしている器をうっかり壊してしまっても、 それでおしまいと思わずに、 破片を探して大事にとっておいてください。