黒田雪子 なおす、みなおす。

お知らせ

朝日新聞 2/17 朝刊のオピニオン面に「捨てる-手放す-」というテーマでインタビューを受けた記事が掲載されます。

新聞横

2014年はこちらにも登場しております。どれも過去に掲載されたものの再編集版です。

書籍
中身の本(地球丸)/わたしの愛用品(地球丸)

MOOK
nid別冊 わたしの暮らしの選択(エフジー武蔵)/
クロワッサン特別編集 やっぱり猫は不思議(マガジンハウス)

本日は立春、そして満月。月を見上げ、荒野へ向けてウォーンウォーンと遠吠えしようと思います。

ART&SCIENCEで、英国人陶芸家 Steve Harrisonの作品集『Pots』が出版されました。その出版を記念した展示がA&Sのギャラリーで11月のひと月間行われています。布張りの厚い本には数々の貴重な作品が掲載されており、その中の1点には壊れたのち金継ぎにより甦った器が含まれています。この器、持ち主は秋に平凡社より美しい料理本『果物料理』を出した料理家、渡辺康啓氏。311の震災で壊れたもので、同年に渡辺氏より修理依頼を受けて手がけたものとなります。
展示では作家の作品を手にとることができます。興味ある方はぜひお早めに。

http://www.arts-science.com/event/2014/10/19/steve_harrison_pots.html

Pots

青山にある根津美術館で、お直しの名品ばかりを集めた展示が行われています。もとは作家の志賀直哉による所蔵で、窃盗犯により粉々に割られたという話で有名な、白磁の大壷も見ることができます。
私が一番見たかったのは、金継ぎされた志野の茶碗、銘は「もも」。単に割れた器を直しているようですが、異なる陶片が組み合わされています。じつはうちの猫の名も「もも(百)」。この器の銘から頂いたと言いたいところですが、単なる偶然で、でも、長寿を願ってつけたという由来は同じ。
この、うちにやって来た痩せっぽちのノラ猫、百と名付けられて間もなく、なんの因果か大腿骨を複雑に折るという災難にあうのです。一時は半身不随のままで一生を過ごすのかもしれないと途方にくれましたが、幸いにして素晴らしいお直しが施されました。手術により足に生涯外せぬ金属の棒が埋め込まれたのです。器のももは呼び継ぎですが、猫の百は鎹(かすがい)止め、なり。
百は今となっては当時の事が嘘のごとく、毎日元気に活動中です。暴れまわるので、つい、カっとなる事態もたまにありますが、嬉しそうに(そう見える)してると、ほんとによかったと頬も緩みます。
物でも人でも動物でも何でも、失いたくないと思える出会いは、なんて貴いことなんだろう。決して仕事のためのキャッチコピーではありません。心の底からそう思います。根津で直された器をみていて、器の主の喜びと器の喜び、双方の充実を感じるのでした。
11/3までとあとわずかなので、まだの方、急いで。

http://www.nezu-muse.or.jp/jp/exhibition/past2014_n06.html

body+ 肌を想う。だから私はオーガニック(ミディアム7/23発売 9月号)内の「Quality of Life」にて金継ぎの取材を受けております。
今、日々の営みのなかで最も大切にしていることは何ですか?
はい、それは、直すこと。

http://nicethings.jp/body9月号7月23日発売/

magazine-2647-main

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10
  • アーカイブ